「生徒代表、手塚国光」
「はい」
「―…今まで面倒を見て下さった諸先生方、並びに頼もしい後輩達。
今まで、ありがとうございました。今日、僕達私達は…―」
最後に桜が舞う季節
「とうとう、この学校とも見納めかー…」
「寂しくなるね」
桜が、ちらほらと少し咲き舞っている。
初春とは言え、やはりまだ肌寒い。
再び、こうして目をやると校舎ってこんなに広かったっけか、と思い知らされる。
「…にしても、見事なものね。その学ラン…」
「ワイシャツのボタンまで、やられたにゃ…」
「外部進学の子が、ほとんどだったね」
「ちぇーっ、高等部進んでも着ようと思ってたのに〜」
テニス部の不二、菊丸は校内のアイドル的存在だった為
ワイシャツのボタンも残す事なく取られてしまったらしい。
ワイシャツの下の肌が、二人をよりワイルドに仕立て上げられている。
「お見事です」
「僕達でコレなんだから、手塚はもっとすごいんじゃない?」
「袖口のボタンどころか、名札や生徒手帳すらないかもね」
「恐るべし、女の子…」
「いいんじゃない?手塚、海外留学だし」
三年レギュラーの中で唯一、外部進学なのが手塚だ。
アメリカへ渡り、本格的にプロを目指すらしい。
何とも彼らしい進路だ。
「彼女、泣いたんじゃない?」
「あぁ、ね。寂しがりやのあの子を、どうやって説得させたのか聞きたいわ」
「も悪どいにゃ」
不二・菊丸と共に教室内で会話をしているのが 。
彼女もまた、三年で一年生からの三年間テニス部のマネージャーを努めていた。
”彼女が泣いた”というのは、実は手塚には相思相愛のガールフレンド…つまり、彼女がいる。
アメリカへ行く、という事は少なくとも二、三年は離れ離れにならなくてはならない。
国際電話の料金もバカにならないし、あの手塚の事だ、彼女―――を気遣い連絡もロクにしないだろう。
「大丈夫よ。二人共”超”が付く程、一途ですもの」
「いーにゃあ、遠距離恋愛…」
「そんなに羨ましがる程、いいもんでもないよ」
「経験者が語る、遠恋の辛さ…」
「うるさいよ、」
不二もまた、遠距離恋愛中の身。
電話やメールのやりとりだけでは物足りないようだ。
「いーにゃあ、二人共、彼女がいて」
「なんてどう?英二」
「丁重にお断りさせて頂きます」
「にゃっ!即答?!」
菊丸の雄叫びも余所に、颯爽と帰る準備をし始める。
式の一ヶ月前からロッカーの中身は持ち帰っていたので、鞄の中は卒業証書のみ、とても軽い。
不二や菊丸はラケットを持ってきているようだが、中学生活最後の想いでをテニスで終わらすとは
何とも彼等らしい。
「。今日の夕方、空いてる?」
「一応。どうして?」
「テニス部の打ち上げ、タカさん家でやる事になったんだ。当然、は…」
「行く。当たり前でしょ。天下の青学テニス部マネージャー様をはみごにする気?」
「決定だね」
不二と菊丸もテニスバッグを背負い、三人は廊下に出た。
いつもは五月蠅いぐらい騒がしい廊下も、この日だけはシーンと静まり返っていた。
「今日で最後か…」
「そだね」
「周助と英二は、このまま高等部?」
「タカさんと大石も一緒だにゃ」
「乾もね」
余程の事が無い限り、殆どの生徒はこのままエスカレーター式に高等部へ進学する。
その余程の事があったのは手塚とで二人は外部進学だった。
「行っちゃうんだね、…」
「うん…ごめんね?」
「ううん、夢があっていいと思う。でも…」
「でも…?」
「毎日、会ってたからこう…ポカンと穴が、さ…」
三年間、奇跡な程一緒のクラスだった不二、菊丸そして。
その上、部活も一緒なものだから共に過ごす時間が必然的に増えていた。
もはや、何を言わなくても分かっている…心が通じ合う仲。
そんな彼等が一人でも離れ離れになるのは、正直辛い所がある。
「手紙、出すわ。電話もする」
「ホント?絶対??」
「えぇ」
そんな話をしながら、テニスコートへ向かう三人。
コートには既に元三年レギュラーと、一・二年新レギュラーが揃っていた。
「あっ、不二先輩達来た!」
「先輩、卒業おめでとうございます!」
先に部室へ行って着替えようと足を運ぶが、コート外でたむろっていた一年生が三人の周りに群がる。
今月のランキング戦で努力が実り憧れのレギュラージャージに袖を通す事になった
水野カツオと加藤勝郎もいた。
「クスッ、ありがとう」
「お前達も頑張るんだぞー!何たってレギュラーだかんなっ」
『はいっ、頑張ります!!』
念願のジャージを手にして、本当に嬉しそうだ。
息の合うこの二人が二代目黄金ペアと呼ばれる日も、そう遠くないだろう。
(余談だが、今回テニス歴二年の堀尾聡史はランキング戦全戦全敗という戦績の為
レギュラーには選抜すらされていなかったとか…)
「お前達も、このジャージを着用する以上、青学を立派に導いていってくれ」
「気を引き締めて試合に挑め。いいな」
『はいっ!!!』
「桃、海堂。後は頼んだぞ」
「ウィッス!任せて下さいっ」
「…ッス」
新部長に桃城、新副部長に海堂が任命され越前の他に一年が二人レギュラー入りを果たした。
少々、不安が残るがきっと大丈夫だ。
こいつ等だけで何とかやっていってくれる事だろう。
毎年、部室で送別会をする事になっていたが河村の父が卒業祝いに握ってくれると言うので
そのご好意に甘え今年は河村の寿司屋で送別会を行う事になった。
送別会は夕方からなので、それまで三年生にとっては中学最後のテニスを楽しみ
一、二年生にとっては一緒にテニスが出来る最後の日なので手取り足取り指導をしてもらう。
この時の皆の気の入りようは普通ではなかった。
そして、元・マネージャーのも最後の仕上げの為、部室の片付けを始めた。
「まーったく!桃が部長になってから、これだもの。…やっぱりマネージャー付けるべきかしら?」
しかし、が引退して直ぐマネージャーを募集したが、どれもこれもミーハーな女ばかりで
仕事もロクにしなかった為、自身が辞めさせた。
秋には竜崎スミレの孫、桜乃とその友人朋香が積極的にマネージャー業を行っていたが
桜乃もテニス部。
毎日は来れないし朋香も弟達の面倒があるので新学期からは期待出来ない。
さて、どうしたものか…と考えながらも掃除する手は止まらない。
既に習慣として身に付いてしまっているようだ。
あらかた片付け、一息付こうとベンチに座るのと部室のドアが開いたのは同時だった。
「センパイ」
「リョーマ…」
ドアを開けた主は越前だった。
越前リョーマ…。
入学当初から圧倒的な強さを見せ付け、青学では前代未聞の一年ルーキーとして活躍していた。
三年が引退し、その後んおJr選抜・新人戦と目覚しい功績を残した。
そのリョーマが三ヶ月前、に「付き合ってくれ」と告白をした。
正直、は驚いた。
と同時に、歓喜を覚えた。
だって、自分も越前リョーマ≠ニいう人間が好きだったから。
だが、少々遅すぎたようだ。
それに、まだ伝えてないのだ。
自分の気持ちを。
自分はリョーマの元を離れ、再び青春を歩むという事実とプライドが邪魔をして言えなかった。
「センパイ…返事、聞かせてもらいたいんですけど…」
「リョーマ…私…私…」
今、言わないと一生後悔する。
そんな気がした。
「…私も…リョーマが好き…だけどっ!ごめんなさい…付き合えないわ…」
「な…?!どうしてっスか?!俺、センパイが高校生になったからって…中々会えなくなるからって
心変わりする気はないっス!!」
「違うの、リョーマ…違うの…。私…私ね、音楽大学付属高校なの…」
「知ってるっス。不二センパイ達から聞きました」
幼い頃からバイオリンを手にしており、物心付く頃にはバイオリン無しでは
生きていけない身体になっていた。
在学中もテニス部のマネージャーをやりながら数多くの賞を受賞していた。
その彼女が将来、音楽の道を歩む事は必然だろう。
「…アメリカのRoyal Academy of music high schoolなの…」
「っ!!!」
Royal Academy of music high school…。
あまりにも有名な音楽学校の名を聞いたリョーマは目を見開いた。
「だから、私とリョーマが離れている間 私以上に素敵な人が現れるかもしれない…。
そうなったらリョーマは私の事を…っ?!」
言い終わらない内に有無を言わさず口付けされた。
何度も角度を変えられ。
深く…深く…。
唇が離された時には、目がトロンとなって頭の中が真っ白になっていた。
銀色の糸を引き、余韻を残され前のめりになってリョーマに寄り掛かった。
そんなをギュッと抱き締める。
「センパイ…俺、何年でも待つっス。だから…」
「リョーマ…」
このキスは偽りじゃあない。
じゃあ、信じてみよう。
根拠のない、その言葉を純粋に信じてみようと。
そう思った。
―八年後―
テニス界に若獅子、登場!
あのサムライJr、国内の大会 全優勝。次はウィンブルドンか?!
テニス雑誌では、このような誌面が相次いでいる。
その中の一つにテニス界の若獅子、サムライJr越前リョーマ アメリカへ
という記事があった。
一方、は世界が認めるバイオリニストになっていた。
今では、世界のあちこちを飛びまわる一番多忙な人間である。
そんなが、長期休暇を利用して極秘で演奏会を開く事になった。
お客は知人、友人だけ。
そんな大それた演奏会ではないし、お金も取らないので
著作権関係なしに気兼ねなく好きな曲を弾ける。
が楽屋で準備をしていると、コンコンと軽く扉を叩く音がしたので
「どうぞ」と促した。
「」
「きゃあっv手塚っ!不二、菊丸…みんなも!!」
「やほーっ!お呼ばれ、ありがとサン☆」
中学時代、同じ部活仲間(と言ってもはマネージャーだったが)であった
手塚・大石・菊丸・不二・乾が駆け付けてくれたのだ。
あれから八年…変わった者もいれば、あれから全く変わらない者もいる。
不二は父親の仕事を継ぎ、若くして大企業の社長秘書。
手塚はプロテニスプレイヤーに。
中学から続いていた恋が実り、三年前結婚。今じゃ一児の父だ。
大石は青春学園大学部の医学部で医者になる為、目下勉強中。
菊丸は今、フリーターだが目標を見つけたらしくそれに向かって前進中との事。
乾は製薬会社の就職が今秋に決定した。
皆、忙しい筈なのにわざわざ、それも日本から演奏会に出席してくれた。
河村、桃城、海堂にも招待状は送ったのだが河村は実家の手伝いで忙しく
桃城と海堂は大学のレポートに追われ時間が取れず来れなかったとの事。
三人共、行けないのを非常に残念がっていた。
「今日の演奏、楽しみにしているよ」
「まかせてっ!絶対、いい音を奏でるからっ」
アメリカ中心部にある高級ホテルの最上階ホール。
そこを全て貸し切って演奏会は開かれた。
客はの友人、知人だけなので演奏会というよりも軽い同窓会になっていった。
「それでは、名残惜しいですが最後の曲となります。これで今日はお開きにしますが
この後、二次会を開きますので時間のある方は是非、振るってご参加下さい」
パチパチ、と拍手が鳴りバイオリン独特の音が奏でられる。
音符が五線の上を踊る。
それを静かに聞き入る。
「ー―――――っ!!」
曲も終盤に差し掛かった所で、突然菊丸が声を張り上げた。
それでも、演奏する手は止まらない。
「、僕達からプレゼントがあるんだ」
「受け取ってくれるよな?」
受け取らない筈がない。
受け取れない理由もない。
は静かに首を縦に振った。
「見て驚くなよぉっ?!」
「一体、何なのーっ??」
「すぐ、わかるよ」
ゆっくりと扉が開かれる。
扉の向こう側に立っていたのは、をフリーズさせるには十分な人物だった。
「」
「っ?!リョー…マ…?!」
突然の人物に演奏する手が止まる。
リョーマは片手に抱え切れない程の花束を持って、一歩…また一歩とに近付いてゆく。
八年前とは背も体格も変わってしまった彼に掛ける言葉が見つからない。
どうしてこんな所に居るのか、とか会えて嬉しいという沢山の思いがごちゃまぜになっていた。
「ど…どうして…?!」
「数年振りに会ったっていうのに、開口一番がそれ?まだまだだね」
口癖は昔とちっとも変わってないようだ。
最後に、彼に会ったのはいつだったか…。
確か、手塚の結婚式の時 演奏しに帰国した時からだから
もう三年も会っていなかった。
あの時、見た彼も十分大人っぽかったのに今目の前にいる彼はあの時より更に大人になっている。
「越前から聞いたよ、…。君、ずっと待たせているそうじゃない」
「もう我慢出来ないらしい。…いい加減、観念したらどうだ?」
不二と手塚の、その言葉を聞いたはバイオリンを近くに居た大石に押し付け越前に飛び付いた。
身長が自分よりも大分、低かった彼は今では背伸びをしなければいけない程。
リョーマは抱き付いてきたを少し離し、ズボンのポケットから小箱を取り出した。
「ねぇ、。俺、優勝したよ」
「うん」
「あの時、待ってる≠チて言ったけど…待ち切れなくなったから」
「うん…」
「俺、もう大人だよ。だから、子供扱いしないで聞いて…?」
「うん…っ」
「…、結婚しよう」
小箱の中身は、の薬指のサイズとピッタリなダイヤの指輪。
「…っ、はい…っ!」
嬉し泣きの所為で声が震えていたけど、確かに、しっかりと、はっきりと聞こえた。
*end*
あとがき。
7000をhitなされた我が学友、類に捧げます(え、遅すぎだって?ごめんなさい…)
勝手に手塚、結婚しちゃってごめんなさい…(汗)
でも、絶対手ェ早いと思うんですけど(笑)
菊ちゃんには、是非あのままプー太郎でいて欲しい…(何っ?!)
彼が就職とか、あんまり想像つかなくて…(滝汗)
類、長い事 待たせてごめんよ〜(><)
お詫びに、この小説を焼くなり煮るなり好きにしてくれぃっ。
私的に炒めるのを希望(は?)
類『右脳人間様のキリ番7000取って頂きましたvv』
リョーマ『…いつの話?』
類『え?覚えてない。キリ番7000だったのかも覚えてない。でも、まだリョーマが一番好きだった頃だよ』
リョーマ『ふーん……今は英二先輩?』
類『うんvvv』
リョーマ『…いつの話?』
類『え?覚えてない。キリ番7000だったのかも覚えてない。でも、まだリョーマが一番好きだった頃だよ』
リョーマ『ふーん……今は英二先輩?』
類『うんvvv』
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